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物流業界問題

物流関連法の改正とは…

流関連法の改正とは…

物流法改正とは、「法律が変わる」ということだけではありません。

その背景には、社会インフラの機能を損なう恐れや危機に直面し、人手不足や長時間労働についても、このままではインフラを支えるライフラインそのものを失い、荷物が届かないという時代が訪れるのではないか、という懸念があります。

【物流「2024年問題」】

働き方改革関連法により、トラックドライバーの残業時間上限「960時間/」が適用されたことでの輸送力低下の懸念、長時間労働に依存していた業界の背景から、仕事量とのバランスが嚙み合わず、配送の遅延、荷受の低下などの問題が深刻化し、一部では「今後運べ切れない荷物が発生する」との見解も出ています。

【ドライバーの不足、残業上限規制の深刻化】

物流業界では、ドライバーの高齢化、若年層の離職により、人材確保が年々困難になっています。残業規制による労働時間の改善が強化される一方で、荷待ちや荷役などの運転以外の業務についても改善がなされなければ、人材確保や離職抑制については、根本的な問題解決にはならないと言われています。

物流二法とは

2025年の「物流効率化法」と「貨物自動車運送事業法」の改正は、これまで重要視していた「市場競争の自由化」から、「取引の適正化」「安全・労働環境の確保」へと重きを変えている特徴があります。30年以上維持されてきた内容の見直しとなり、物流構造そのものを変えるとも考えられます。

物流効率化法:物流の総合化と効率化の促進

貨物自動車運送事業法:トラック運送事業の基本、事業許可、安全管理、運賃制度等の適正

緩和から「規制的措置・持続可能性重視」への転換

これまでは「自由化と競争促進」が政策の中心でしたが、今回の改正で方向性が一変、今後は3つの軸で物流の持続性を重視した制度へ転換していく様子が伺えます。

1・適正運賃の収受  : ドライバー賃金、労働環境の改善

2・事業者の参入   : 無秩序な参入の抑制

3・業界の協働促進  : 荷主、元請の責任負担

このような思想転換が、2025年改正の最重要となるポイントです。

物流効率化法の主な改正点

20254月に、運送事業者、荷主、倉庫事業者など関係するそれぞれに対し、物流効率化のために取り組むべき措置が「努力義務」として通達されました。20264月には、規模が大きい物流事業者や荷主などの「特定事業者」に対して、物流事業の効率化に関する対応が「義務付け」される予定となっています。  

具体的には、物流効率化措置を実施するための中長期計画の作成、定期報告(年1回)の義務付け、計画の実施状況によって、国が勧告、命令を出すケースもあるとされています。また、特定荷主は、物流統括管理者を選任し、デジタル化など効率化のための設備投資や社内研修などを実施させる必要があるとされています。

「持続可能な物流の構築」「取引の公正化」「安全性・労働環境の確保」に重点が置かれたことにより、運送事業者、荷主企業というサプライチェーン全体での効率化が期待されています。また、曖昧であった運賃、委託構造、責任範囲を明確化することで、適正な取引環境が整えられ、業界の賃金改善、離職防止につなげる狙いや目的もあり、今後の業界に大きな影響を与えるものとなりました。

202541日の改正は、「取引の透明性」「実態把握」「安全確保」に直結する内容であり、企業(荷主・運送事業者)に対して日常業務レベルでの対応が求められています。

貨物自動車運送事業法の主な改正点

改正貨物自動車運送事業法は、特に物流業界における「2024年問題」への対応や、軽貨物運送事業者の安全対策強化等における具体的な対策を講じたものになっています。

契約時の書面交付義務の強化

 業界の習慣として口頭契約などの曖昧な契約が横行していましたが、今後は取引の透明化と責任の明確化が必要とされ、「契約内容を書面または電子交付」にて明示することが義務化されます。

書面への明記内容としては

・運賃の内訳

・荷待ち荷役など附帯作業の有無

・積込み荷降ろしの責任範囲

・再委託の可否

などがあります。

これらを明記することでトラブルの防止や責任範囲が明確になりました。荷主側だけでなく双方に、いわゆる「丸投げ」、「言った言わない」の慣習が通用しなくなり、企業間の取引におけるコンプライアンスが問われるようになります。

実運送体制管理簿の作成・保管義務

元請けが再委託する場合、実際に運送を担う事業者を特定し、管理簿に記録、保存することが義務化されました。多重下請けや不透明な委託の実態の可視化、安全管理責任の所在を明らかにしています。

事業許可の「5年更新制」導入

改正により、一般貨物運送事業の許可が「一度取得すれば良い」という従来の制度から、5年毎の更新、審査を受ける仕組みに移行します。これにより、継続的な安全管理体制、労務管理が求められ、適切な運営ができていない事業者は市場から淘汰される可能性があります。 更新審査では、事故や重大違反、賃金支払い状況、車両管理なども評価対象となる見込みであり、法令遵守と安全投資を行う企業が優遇され、価格だけに頼る競争からの脱却が進むように検討されています。

そのほか、

・適正な原価を割る運賃の禁止

・再委託は原則「2次まで」に制限(努力義務)

無許可運送事業者(白トラ)への委託禁止と荷主罰則の導入

軽貨物事業者への安全対策強化

など、運送事業者、荷主にとっては検討が必要となる可能性もあります。

改正は運送事業者だけの課題ではなく、荷主企業にも法的責任と取引改善が求められています。物流効率化については「努力義務」となっていますが、国が定めた判断基準に基づき状況をチェックされ、指導や調査、公表がされることもあり、企業イメージにつながる可能性もあります。

荷待ち・荷役時間の削減|取引環境の改善(ドライバーの負担軽減、配送の安定確保)

・予約受付や時間指定の導入による混雑回避

・積卸作業の簡素化・パレット化による作業効率向上

・現場担当者への教育による無用な待機の削減

適正運賃での取引と書面契約の徹底コンプライアンス遵守と信頼できる物流パートナーの維持)

・見積り、契約書の条件明記

・価格交渉の回避

・運送会社との情報共有(配送量、納期など)

共同配送、モーダルシフトなどの協力体制(単独対応では限界、他社連携や共同配送は不可欠)

・トラック台数・ドライバー不足のリスク分散

CO₂排出削減による環境配慮(ESG評価の向上)

・輸送コストの平準化・効率化

物流関連法の改正は、単なる規制強化ではなく、人手不足と持続可能な物流構造の再構築も目的としています。法改正によって人手不足が解消し、環境変化を実感できるかどうかは、荷主、行政も含めた業界全体の取り組みをいかに進められるかによって大きな差が生じると思われます。社会全体での取り組みが進めば、業界の環境は確実に改善へと向かうでしょう。

しかし、中小規模の運送会社や荷主企業にとって、書面契約の徹底や許可更新制度への対応は、コストや人材面において大きな負担となることでしょう。

これまでの習慣になかったものとして、

・契約書作成、管理などの事務負担

・原価計算や運賃交渉の対応

DX化の設備投資 

などが挙げられます。

これらに伴う資金繰りに対して、政府は支援策や補助金制度も準備していますが、共同配送、共同拠点、共同ネットワークへなど、単独行動から連携が必要となるシーンも多くなると思われます。早期からの準備と計画的な取り組みが必要となるでしょう。

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